ガス絶縁形変圧変流器の気中端末結線器(端末治具)の開発

電気計測

(Vol.40,No.1)ガス絶縁形変圧変流器の気中端末結線器(端末治具)の開発

[研究]ガス絶縁形変圧変流器の気中端末結線器(端末治具)の開発
Deve1opment of termina1 treatment device for high vo1tage of GIS type Vo1tage and current transformer.

小川 和夫・, 菅光 太郎・・, 清水 雅和・(・検定部,・・標準部)
K.Ogawa, K.Kan, M.Shimizu

The inspection method of voltage transformer of Gas Insulated Switch gear(GIS) directly connected type Instrument transformer is done separating instrument transformer from the inside of GIS. voltage transformer of separated instrument transformer connects the adapter with the bushing(capacitor core)for penetration and the high voltage terminal uses the insulator bushing made of porcelain.
The joint part of the adapter 0encloses the cover insulation gas with the gas case, and that is, the high voltage terminal impresses the voltage s of 77k V or 66 kV with a bushing and does the authorization inspection. However, largescale construction such as bushings and the gas collection devices was needed though a safe inspection was enabled by this method.
There was a problem of the work efficiency and the labor saving in this method. then, the impression of a high voltage did not use the insulation gas and developed the terminal apparatus with an easy handling possible and safely in air the bushing of GIS type voltage transformer(77kV or66kV)for penetration. It gave priority as a condition of development to enduring ll0% of 77kV in the environment of the constancy degree. the terminal apparatus for a high voltage is composed of the electrode of aluminum to control the electric field and the epoxy for external insulation. The developed terminal treatment device was possible to satisfy a specification necessary for the inspection enough. The evaluation of the constancy degree was obtained as a result and it reports on. The range of use of the produced terminal apparatus was limited to the capacitor core for a directly connected type of oil and the gas with the largest amount of the inspection.


1. はじめに
 SF6(六ふっ化硫黄)ガスを使用したガス絶縁機器の実用化は,小型・軽量化,省メンテナンス及び耐久性などの特長を活かして適用拡大を続けてきた.計器用変成器(1)においてもGIS(ガス絶縁関閉装置)直結形計器用変圧器及びGIS直結形計器用変圧変流器として普及が拡大し,通常は,特別高圧(22kV)から超超高圧(550kV/√3)の広範囲にわたり使用されている.
 GIS直結形計器用変圧変流器(以下,VCTと表記する)では,検定検査(以下,試験と言う)の際に一次電圧印加用の専用気中ブッシングを装着した状態で行うのがー般的である.この方法により安全に試験は実施できるものの,専用気中ブッシングの着脱には,SF6ガスの充填及び回収が必要になるなど,多大な工数と手間が必要である.特にVCT取付け場所で行う試験(出張検定)においては試験作業に伴う人手,作業日数及び作業コストを多く必要とするため,いかに安全に省力化を図るかが課題であった.
 そのため,SF6ガス(充填及び回収)を使用せず,77kV及び66kVクラスのVCTを気中において安全かつ簡便に一次電圧を印加可能とする電圧印加用端末治具(以下,気中端末器と言う)を調査検討していたが,実用可能な気中端末器の開発に一定の評価が得られたので報告する.

2. 検定検査の背景
2.1 VCTの推移
 80kV以下の三相3線式計器用変成器は試験数の最も多いクラスであり,第1図に示すように試験数も25年間で著しい増加を示している.なかでも特別高圧77kV及び66kVクラスの三相3線式VCTは需要家数も多く,発変電所などGIS化された電力施設の普及に比例して設置台数の増加は著しい.
 第2図はGIS化された発電所の送電設備に取り付けられているVCTの総合外観である.今後,これら多数のVCTが検定更新の時期を迎え,一般的な場合,取付け場所で試験(出張検定)を行う必要が予想される.

2.2 VCTの構造
 VCTの構造は,変圧変流器を格納している本体容器及びVCTと母線側のガス容器との接続に使用するガス接続容器(以下,シースケースと言う)で構成されている.

第1図 80kV以下のVCT試験の推移
Fig.1 Transition of VCT inspection of Iessthan80kV

第2図 VCTの総合外観
Fig.2 Outsideview of VCT

 貫通ブッシングが装着されているシースケースの絶縁はSF6ガスを用いたガス絶縁方式であるが,変圧変流器が格納された本体容器の絶縁は絶縁油を使用したOil/Gasタイプと,SF6ガスを使用したGas/Gasタイプの2種類がある.現在までに試験を行っている大多数は本体容器の絶縁に絶縁油を使用したOil/Gasタイプで,気中端末器はこのタイプを対象としている.第3図にOil/GasタイプVCTの外観と,第4図にOil/GasタイプVCTの構造及び寸法の一例を示す.
 シースケース内部は,U相,V相,及びW相の貫通ブッシングがそれぞれ配置され,GIS母線側とシースケースを介して接続後,シースケース内に一定圧力のSF6ガスを充填して絶縁を保っている.

第3図 Oil/GasタイプVCTの外観
Fig.3 Outside view of Oil/Gas type VCT
第4図 Oil/GasタイプVCTの構造寸法
Fig.4 Structure and size of Oil/Gas type VCT

 高電圧電力機器などから高電圧部分を気中に引き出す際に用いる一般的な機器貫通ブッシングは,機器側がい管部と気中側がい管部に大別できるが,気中側がい管は気象条件や汚損など外部環境の影響を受けるため,がい管を長くしている.また,がい管表面には沿面放電の進展を防ぐためにひだを設けている.
 同様にVCTの貫通ブッシングの構成も,機器(油)側がい管部とSF6ガス側がい管部に別れるが,気中側に相当するSF6ガス側がい管部は外部環境の影響を受けない密閉されたシースケース内に一定圧力のSF6ガスを充填して使用するため,ブッシングの構造なども気中ブッシングとは異なる.ブッシングコアにコンデンサを使用したコンデンサブッシング構造として電位分布の均等化を図り,全長及び外径も小さく全体に小形化され,かっ貫通ブッシングの各相間も近接して配置されている.
 貫通ブッシングの表面はエポキシ樹脂加工され,先端部にはGIS母線側のアダプタと接続するための銅製の端子が付いている.第5図はVCTに使用されているV相用貫通ブッシングの概要である.

第5図 V相用貫通ブッシングの概要
Fig.5 0utline of through Bushing for V phase

3. 現状の検査方法
 VCTは,本体に気中で一次電圧を印加できる端子を備えていないため,試験を行う場合はSF6ガス中の使用を前提に設計された貫通ブッシングを介して,いかに安全かつ確実に一次電圧を印加するかが問題になる.従来までに行われてきた試験方法の概要を次にあげる.

3.1 専用試験ブッシングの使用
 VCTに安全かつ確実に一次電圧を印加するために製作された専用気中ブッシング(以下,試験ブッシングと言う)を使用する方法である.試験ブッシングは貫通ブッシングと接続するアダプタが付いたガス容器をVCTのシースケースに装着し,高電圧の引き出しはガス容器外部に備えた気中ブッシングを介して行う構造を持つ.VCTのタイプごとに専用の試験ブッシングが製作されているが,本来メーカーの社内検査を行うために製作されているので,製作場所に出向いて行う試験(工場検定)以外の使用は難しい.その理由としては,試験ブッシング装着時のSF6ガス充填回収装置のほか,クレーン,輸送機などの重機及び人的な作業時間を必要とするためである.設備の整ったメーカーの工場でブッシングを装着する場合でも数時間の作業時間を要し,発変電所などで行う現地の試験に用いるのは省力化及び作業コスト面で制約がある.
 試験ブッシングは一般的に三相用の気中碍子ブッシングを装備し,試験ブッシングを装着した状態で通常の気中ブッシングタイプのVCTと同等な状態で一次電圧及び一次電流を加えられるため安全性は最も高い.第6図は,試験ブッシングを装着したVCTの一例である.

第6図 試験ブッシングを装着したVCTの外観
Fig.6 0utsideview of VCT equipped with bushing for testing

3.2 絶縁ガスの簡易使用
 VCTの貫通ブッシングが設置されているシースケース外周をシート状の絶縁物(ビニルシートなど)で覆い,シースケース内部にSF6ガスを充填して電圧を印加する方法である.
 大気圧で比較してもSF6ガスは空気のおよそ3倍の絶縁耐力を持ち,かつ消弧能力に優れているため大気中で電圧を印加する場合と比較すれば絶縁強度の面では有利であるが,容器を密閉して圧力を加えてガスを充填してないのでガス密度に不安定な要素がある.同様に,空気を1としたSF6ガスの比重は5.1と重く,SF6ガスはシースケース下部に貯まるが,シースケースを密閉していないため周囲の環境による影響でSF6ガスが拡散しやすい.このため,電圧の印加中にSF6ガスを常に入れ続けた場合,シースケースから溢れたSF6ガスは外部へ放出状態になる.更に,使用した後でSF6ガスを回収することは不可能で,試験終了後は大気中に放出することになるが,SF6ガスの地球温暖化係数は,C02ガスのおおよそ24000倍あると言われている.1997年に地球環境に関する温暖化ガスの一つに指定され環境保護の見地からも問題が多い方法といえる.

3.3 絶縁管の使用
 VCTの貫通ブッシングを包み込むように円筒形状の絶縁体で覆い,貫通ブッシング先端に取り付けた金属製の接続棒に印加線を接続して電圧を印加する最も簡易的な試験方法である.
 貫通ブッシングの各相間及び貫通ブッシングとケース間などの横方向の絶縁に対しては絶縁管で遮蔽するため,絶縁管の材質が持つ固有の絶縁性能に応じた一定度の絶縁耐力は有効だが貫通ブッシング取付け面の垂直方向に対しては絶縁遮蔽できない.
 これまで絶縁管を使用したときの絶縁耐力について実験的な評価及び論理的な解析は行われておらず,使用環境を含む安全限界の基準がなかった.ただし,取扱いにおいては最も簡便で省力化に優れかつ低コストである.
 第7図は,V相用貫通ブッシングに装着した絶縁管の一例である.

4. 気中端末器
4.1 仕様,構造及び材質
 今回開発した気中端末器は,VCTの貫通ブッシング先端に装着することにより大気中で電圧を印加したとき電界ストレスが十分な裕度を持つような形状に設計された電界制御機能を有するエポキシ加工したコロナシールド内蔵の気中端末器である.第1表に製作した気中端末器の仕様を示す.
 本体は,コロナシールド部と試験電圧を印加する電圧印加端子部から構成され,第8図に断面形状及び寸法を,第2表に構成部材を示す.第9図,第10図は気中端末器を実際にVCTに装着したときの外観である.

第1表 66/77kVガス絶縁変圧変流器 気中端末器(V相)仕様
Tab1e1 Specification of termina1 treatment device

第7図 絶縁管の一例
Fig.7 Examp1e of insu1ationtube

第8図 気中端末器の構造寸法
Fig.8 Structure size of termina1 treatment device

第9図 気中端末器の装着外観 I
Fig.9 0utsideview of VCT equipped with terminal treatment device I

第10図 気中端末器の装着外観2
Fig.10 0utsideview of VCT equipped with terminal treatment device 2

第2表 気中端末器(V相)の構成部材
TabIe2 Composition Materials of terminal treatment device

 気中端末器を装着した状態で電圧の印加を行うと,貫通ブッシング先端の端子部分などに発生する電界ストレスは,内蔵されたコロナシールドが電界を均等化することで電界集中を緩和させる.また,各相聞及びケース聞の絶縁は,コロナシールドの表面に施されたエポキシモールドで保持される.
 コロナシールド部はアルミニウム合金で縦方向の断面形状が“H”形の円筒状に形成された内部導体(以下,シールド電極と言う)と,シールド電極の円筒部表面をエポキシ樹脂で覆う構造になっている.アルミ製のシールド電極は,削り出しによる一体成型で製作され,シールド電極を覆うエポキシ樹脂は亀裂及び気泡あるいは不純物が混入しないようにシールド電極に合わせて専用金型により精巧に製作した.
 電圧印加端子は,アルミ合金製の円柱両端に取付け用のネジ加工が施され,表面にビニル樹脂の絶縁防食層を4mmの厚さにコーティングした構造になっている.

4.2 試験電圧の印加方式
 気中端末器が対象としているVCTの内部結線は,単相変圧器2台で構成される三相V結線式である.安定した基準電圧を得るため,試験電圧の印加方式としてはV相を接地してU相及びW相から三相あるいは単相で電圧を印加する正相順による方式,またはU相及びW相を接地してV相から電圧を印加する逆相順による方式の二通りの方式がある.
 どちらの印加方式を選択するかで気中端末器を装着する貫通ブッシングの形状が異なるため,印加方式の選択によって取扱いを含めた設計仕様も異なる.
 第11図は,0il/GasタイプのVCTに気中端末器を装着した場合の,各相貫通ブッシング及び隔壁など接地電位部との位置関係を示した見取り図である.また第12図は,2種類のシースケース部分を上部から見たときの貫通ブッシングの配置及び寸法を示す.

第11図気中端末器の装着断面図
Fig.11 Sectiona1view of termina1 treatment device

第 12図 貫通用ブッシングの配置
Fig.12 Position of through bushings heath case

 U相及びW相はVCTの内蔵変流器に電流を流す必要性から,K側とL側の2重の端子構造になっているため、V相に比べて外径の端子部分が大きい.このためU,W相端子に接続する気中端末器を製作した場合,気中端末器が大きくなり次のような問題がある.
 第12図のようにシースケース部の内径はVCTのタイプにより910mmと840mmの二種類があるが,各相の貫通ブッシング中心は図中に示すように正三角形状に配置されており,V相,U相及びW相の相聞配置寸法は300mmで,この関係はどのタイプでも一定である.
 しかし,各相の貫通ブッシング中心と接地電位であるシースケース外壁部との絶縁距離は,シースケース部内径840mmの小さい内径タイプで見た場合,相用貫通ブッシングは290mmであるが,U相及びW相用貫通ブッシングでは200mmになる.
 これを貫通ブッシング中心ではなく貫通ブッシング表面からの距離で見ると,V相は250mmであるが,U相及びW相は貫通ブッシング先端の端子部分が大きいため110mmになり,ケース(接地電位)と接近している.このためU相及びW相から電圧を印加する場合は,V相から電圧を印加する場合に比べケース聞の絶縁距離で非常に厳しい条件と言える.本来,試験電圧は三相で印加するのが理想的であるが,より安全な気中端末器を使用する場合には前述したような問題が残る.
 そこで,気中端末器ではV相から逆相順で電圧を印加する方式で試験を行うようにした.この場合,正相順と逆相順との試験データに有意差のないことが必要であるが,VCTの内蔵変圧器は単相変圧器が2台から構成されており,変圧器単体で見た場合の正相順と逆相順による差はないと考える.また,V相から電圧を印加する場合は,三相で電圧を印加したときと同様にU相及びW相2台の変圧器が励磁されるため,単相で電圧を印加する場合と比べ相互干渉による影響が異なることが考えられるが,近年の計器用変圧変流器は相互干渉自体が極めて小さくなるような設計仕様及び構造で製作されており,変圧器相互聞の干渉による影響は極めて小さい(2).

第3表 三相とV相の印加電圧による誤差の比較
TabIe3 Error comparison by impressed Voltage of three phase and V phase
正相順(三相印加)試験と,逆相順(V相印加)試験との差(サンプル)

第4表 単相とV相の印加電圧による誤差の比較
TabIe4 Error comparison by impressed vo1tage of sing1ephaseandV phase
正相順(単相印加)試験と,逆相順(V相印加)試験との差(サンプル)

 これは,従来から試験ブッシングを使用し,製造場所で行うVCTの試験(工場検定)において,V相を接地してU相及びW相から三相電圧を印加したときの試験データ,またはU相あるいはW相の単相で電圧を印加したときの試験データと,U相及びW相を接地してV相から電圧を印加したときの試験データを長年に渡り取り続けた実績に基づくものである.第3表及び第4表は,異なる印加方式で測定した実際のデータの一例であるが,これらの試験データ聞に顕著な有意差は見られず印加方式に依らず同一なデータが得られている.これらのことから,気中端末器はU相及びW相を接地して,V相から逆相順に電圧を印加するV相印加方式が,絶縁性能と気中端末器の小型化及び取り扱いの簡便さにおいて実用に適しており,開発した気中端末器もV相に装着して電圧を印加する方式とした.

5. 気中端末器の電界解析と破壊試験
 一般的に気中で機器ブッシングなどの端子部分に高電圧を印加すると,まず電圧を印加した端子周囲の気中電子が電界によって加速され,電離電圧以上のエネルギーになると気体分子と衝突して電子とイオンが生じる電離現象が起こる.更に電圧(電界)が高くなると電離により生じた電子が加速され電離を繰り返し暗流(持続性がない電流の流れ)となり,端子部分あるいは印架線などの電界集中している箇所からのコロナ放電を経てリーダーと呼ぶ導電性の高い放電路が進展して絶縁破壊に至る.この状態の電圧を絶縁破壊電圧あるいは破壊電圧と呼び,通常大きな音と光を伴う.VCTの貫通ブッシングに気中で電圧を印加し電圧を上昇していく場合も貫通ブッシング先端の端子部分など,電界が集中している箇所からコロナ放電が発生し絶縁破壊を起こすことになる.故に何らかの方法により電界分布を均等化することで電界集中を緩和してコロナ放電開始電圧を高めることができれば絶縁性能を向上させることが可能になる.そのためには実際の電界分布を計算により正確に把握することが重要で,このことを電界解析あるいは界面解析といい絶縁設計の重要な判断基準になっている.
 絶縁設計で必要な電界計算(3)は,高電圧が印加される端子などの空間電界を求めることである.例えば電荷が空間的に連続分布している場合,空間の電位ゆは単位電界密度をρとしたポアソンの方程式から(1)となり,また電界Eは(2)から求まる.また,単位電界密度ρ=0の領域においては(1)式の右辺が0のラプラス方程式(3)を解くことが電界計算の基本となっている.気中で安全かつ確実に電圧を印加できるVCT用の気中端末器を考えるとき,高電圧を安全に維持するための技術要素として電界解析は重要である.前述したように絶縁破壊は電子が電界によって加速されることで引き起こされるため,気中端末器から電圧を印加した状態の電界分布を正確に解析することで,最大電界の低減と気中端末器の小型化をバランスさせた適切な形状設計が可能になる.

5.1 気中端末器の電界解析
 第13図のような実機を模擬した装置の中で,V相用貫通ブッシングに気中端末器を取り付けて実際に電圧を印加したときの電界分布を計算により求めた.第14図の(a)及び第15図の(a)は貫通ブッシング中心とカバーの絶縁距離290mmとした場合の計算結果を,気中端末器周囲の等電位線及び気中端末器エポキシ表面の電界ストレス分布として表したものである.また,第5表に,このときのシールド電極とエポキシ表面の設計ストレスと裕度(安全係数)を示す.
 なお,電界計算に必要なパラメータである印加電圧は,規格(JEC-3408)より公称電圧77kVにおける最高電圧の80.5kVとした.
 また,気中端末器の想定破壊電圧は文献(4)及び実験データから求めて,エポキシ表面でコロナ放電を生じない許容電界値として2.5kV/mm,及びシールド電極部分を覆うエポキシの破壊電界値として25kV/mmと想定し,気中端末器の最大電界値がこの破壊電界値に対して十分裕度を持つような構造を設計した.
 電界解析の結果,気中端末器を装着することで貫通ブッシング先端部の電界ストレスは,第15図(a)の電界分布が示すようになだらかで均等化されていることがわかる.
 特に電界ストレスが一番高くなるエポキシ先端部(第14図(a)及び第15図(a)のA点及びB点)で,対ケース聞の絶縁距離290mmにおいて設計電界ストレスは破壊ストレス2.5kV/mmの56%程度にあたる1.41kV/mmと十分に小さく,裕度は1.77である.シールド電極部についても設計電界ストレスは0.72kV/mmで,破壊電界値25kV/mmに対し裕度は34.7である.同様な電界解析を3.3項で述べた絶縁管をV相用貫通ブッシングに装着した場合についても行ったところ,貫通ブッシング先端部の最大電界ストレスが3.5kV/mm以上になり,絶縁管を付けない状態よりも電界ストレスが高くなることがわかった(第14図(b)及び第15図(b)を参照).

第13 図気中端末器の試験形態
Fig.13 B1ockdiagram of VCT testing using termina1 treatment device

第14図 気中端末器における等電位線
Fig.14 Equipotentia11ine of termina1 unit

第5表 各部の設計ストレスと裕度
Table5 Design stress and tolerance in each part
(a)気中端末器(b)絶縁管

第15図 気中端末器エポキシ表面の電界分布
Fig.15 Electric field distribution on surface of epoxy resin

第6表 破壊試験の結果(電界ストレス)
TabIe6 Results of destructive examination

5.2 気中端末器の破壊試験
 絶縁設計の妥当性を確認するために商用周波耐電圧試験及び商用周波破壊試験を行い,設計どおりの絶縁性能を有しているか検証を行った.試験は電界解析計算と同様に,第13図の実機を模擬した装置上でV相用貫通ブッシングに気中端末器を取り付け,貫通ブッシング中心と周囲のカバーまでの絶縁距離及び高さをVCTの実寸法である絶縁距離290mm及び高さ500mmに設定した場合と,実験的に実際より厳しい条件である絶縁距離250mm,高さ530mmに設定した場合の二通りの状態で行った.
 まず,商用周波耐電圧試験として設計電圧であるAC80.5kVを10分間連続して印加し,異常のないことを確認した後,商用周波破壊試験として10kV/10分ステップで絶縁破壊まで昇圧し破壊電圧を求めた.商用周波破壊試験の結果を第6表及び第7表に示す.破壊試験の結果から,気中端末器の破壊はエポキシ表面が気中コロナ放電発生電界(設計破壊電界)である2.5kV/mm近傍まで達した後,気中放電が発生した.この試験結果から気中端末器の絶縁設計の妥当性が確認できた.試験時の気温は20C,湿度は50%で,破壊電圧は気中端末器からカバーまでの絶縁距離290mm(既定距離)の条件で132kV,また絶縁距離250mm(実験距離)の条件で120kVである.ただし,湿度の条件によってはこの限りではない.
 商用周波破壊試験の結果から実際の気中印加電圧限度は,定格電圧77kVの110%試験点である84.7kVを包含する85.0kVとした.この電圧値は実験距離の破壊電圧対して1.4倍以上の裕度を持つ値で十分な安全性を保って電圧の印加に耐え得るものである.
 絶縁距離の長短両方の絶縁破壊時とも,気中端末器とシースケース部分との間で気中閃絡を起こしていたが,貫通ブッシング表面には閃絡の痕跡はなく,気中放電は気中端末器のシールド電極とシースケース間で引き起こされたものと考える.このことから気中放電が起こったとしてもコンデンサブッシング構造になっている貫通ブッシングに損傷を与える可能性はほとんどないと推測される.

第7表 破壊試験の結果(試験形態)
TabIe7 Results of destructive examination by insulated distance
試験環境 試験条件

6. 使用方法及び取扱いの注意
 気中端末器の取付けは簡便な作業で行えるが,本来の性能を十分発揮させ,安全に試験電圧の印加を行うためには,正しい取扱い方法と注意事項の熟知が欠かせない.第16図に取付け方法より注意事項の要点を示す.この図に基づき取付け手順と注意すべき点を次にあげる.

6.1 V相用貫通ブッシングの装着方法
 (1)保管ケースから気中端末器を取り出した後,目視により本体及び電圧印加端子外観に傷などの異常がないことを確認する.
 (2)毛羽が出ない専用の清掃用布と無水アルコールを用いて気中端末器のエポキシ表面及び電圧印加端子表面を清掃し,十分に乾燥させる.
 (3)気中端末器取付け面の平らな面をVCTのV相用貫通ブッシング上部端子に取り付け,六角穴付きボルトを用い10N・mのトルクで締め付ける.取付け穴は4箇所あるが対角線上に2箇所締め付ける.
 (4)電圧印加端子を,取付け用ボルトを使用して気中端末器上部に固定する.
 (5)電圧印加端子の上部先端に埋め込みボルトを取り付けて電圧印加線を蝶ナットで固定する.

6.2 取扱いの注意
 気中端末器を取り扱ううえで特に注意すべき点を次にあげる.これらの注意点の見落としは重大な結果を招く可能性があるため細心の注意を払う必要がある.
 (1)気中端末器の取り扱いは,エポキシ表面に汗及び油などの汚れを付けないように手を洗浄してから行う.エポキシ表面に付着した汚れは,無水アルコールを使用して不純物を拭き取る.
なお,一度使用した清掃用布は取付けボルト着脱による金属屑などが付着している可能性があるため再使用しない.
 (2)エポキシ表面に傷(ひび割れ,欠けなど)がある場合は,使用を中止し補修をすること.
特に本体下部湾曲部に付いた些細な傷も放置せず,必ず補修をする.  (3)気中端末器は上下の取付け方向があるため,必ず取付け面の平らな面を貫通ブッシングに取り付ける.
 (4)気中端末器をV相用貫通ブッシングに取り付けた状態でV相用貫通ブッシング端子部と気中端末器本体内側のエポキシ表面に1mmの以上の隙間があることを手鏡などを使用して必ず確認する(第16図のX部参照).
 (5)気中端末器エポキシ表面に傷を付けないように取り扱いに注意する.特に気中端末器下面(第16図のB)は電界制御を行う上で電気的に重要な箇所のため,床に直接置くようなことはせず緩衝材などを敷いた上に置くようにするなど細心の注意を持って扱う.
 (6)気中端末器を使用して印加可能な最大電圧は85.0kVである.これ以上の電圧を印加してはならない.
 (7)気中端末器は電圧の印加専用で電流を流す能力はない.VCTの内蔵変圧器励磁電流と変圧器定格負担までの負荷電流以上の電流を流してはならない.
 (8)気中端末器は基本的にOil/GasタイプVCTに使用されている日本ガイシ株式会社製V相用ガス及び油貫通ブッシング専用である(ブッシング形名RV-E735-AA,H430mm士1mmゆ80mm士1mm).
 (9)降雨時に屋外で使用してはならない.また,屋内屋外に関わらず,貫通ブッシング表面及び気中端末器表面に結露が出る環境では使用してはならない.

第16図 気中端末器の組立
Fig.16 Assembly and procedure of terminal treatment device.

7. 試験の注意
 前述したように本品を取り付けたVCTの電圧の印加方法はV相印加による逆相順印加になる.すなわち,電圧の印加に際してU相及びW相を接地することになるが,この場合2極構造になっているK側及びL側の端子両方を必ず接地する必要がある.
 U相及びW相を接地してV相印加を行った場合,そのままでは二次側の相順を確認することができないため,この場合は片側(U相)のみを接地してV相から微小電圧(定格電圧の5%〜10%程度)を印加し,接地した側の相(U相)の二次電圧を極性チェックと同時に確認する.
 また,電圧の印加線は,気中端末器取付け箇所からシースケース聞の距離が十分取れるように逓昇変圧器の二次端子の高さを調整する.なお,電圧印加端子の許容加重は1kg以下である.
 V相印加では,二次端子のu,wとvの相順も逆になるので接続には注意し,変流器側の二次端子Uk及びWkなどの使用しない端子は接地する.
 一次高圧側,二次低圧側の接続及び結線チェックの後,試験電圧の印加を行うが,このときに急激な電圧の昇圧はせず,周囲の状況に十分な注意を払いながらゆっくりと昇圧し,試験電圧まで昇圧した後,誤差の測定を行う.気中端末器の印加時聞は特に制限はなく,試験ブッシングを使用した従来のVTの試験と同様である.第17図は気中端末器を使用した定格電圧77kVのVCT試験の外観である.

第17図 実機試験の外観
Fig.17 0utsideview of VCT testing using terminal treatment device

8.終わりに
 V相用貫通ブッシングの周りを絶縁管などで覆い定格電圧を印加させる場合,VCTの各相貫通ブッシングはガス中で使用されることを条件に絶縁設計が行われているため,一定の試験条件による使用の限界がある.
 その一つの理由に,絶縁管には電界を制御するシールド電極あるいは半電導層などが施されていないため,各相及びケース聞の絶縁に対してはある程度有効であるが,貫通ブッシング先端部の電界ストレスについては,絶縁管などを付けない状態よりも電界ストレスが高くなる場合があることがわかった.
 今回製作した気中端末器は電界制御機能を有するシールド電極を付加して,VCTに装着することにより電界ストレスを減少させ,簡便かつ安全な試験が行えることが確認できた.これにより環境の影響を受けやすい現地検定での安全性,効率性などの有利性は評価できたものと考える.
 今後の特別高圧における計器用変成器は更にガス絶縁方式が主流をなし,それに伴いより小型化になることが予想される.今回開発したVCTの気中端末器は,その対策の一例であるが,使用できる範囲は0i1/GasタイプVCTの貫通ブッシングに限定されている.
 今後は今回の開発成果を基に,Gas/GasタイプVCTでも気中試験が可能な方法を検討していきたい.
 最後に本品の開発及び製作に多大なご協力を頂いた昭和電線電績株式会社の瀬間課長をはじめ,東光電気株式会社,日新電機株式会社,日本ガイシ株式会社及び株式会社高岳製作所の関係諸氏に感謝の意を表します.

参考文献
(1)森本 和三:PT・CT実務必携,東京電機 大学出版.
(2)小川和夫,菅光太郎:“VCTにおける相互干渉の一試験方法について”,電気検定所技報.Vo1.36,No.1,p.15,2001.
(3)小崎正光:Inter University 高電圧・絶縁工学,オーム社.
(4)高電圧試験ハンドブック,電気学会.
(平成16年11月15日受付)
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電気検定所技報Vol.40,No.1(p13)

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