2段変流器の原理を応用した大容量コンデンサ (100μF 〜 10F) 測定システムの開発

インピーダンス校正

(Vol.43,No.2)
2段変流器の原理を応用した大容量コンデンサ (100μF 〜 10F) 測定システムの開発

[研究]2段変流器の原理を応用した大容量コンデンサ (100μF 〜 10F)
測定システムの開発
Development of a Measurement System Applied the Principle of the 2-stage CT for High-capacitance (100 μF 〜 10 F)

堤晋太郎・_五十嵐晃・・(・標準部 校正サービスグループ/・・技術アドバイザー)
S.Tsutsumi_A.Igarashi

A high-capacitance measurement system has been developed by Japan Electric Meters Inspection Corporation (JEMIC).
The system has been applied the principle of the 2-stage current transformer. In addition, the system has high input impedance inductive voltage divider, stable ceramic type capacitor (100
μF) and direct reading tan δcircuit.
The system can be measured capacitance range from 100 μF to 10 F and tan δrange from 0.1 to 0.000 001 at frequency from 50 Hz to 1 kHz (capacitance range for 100 mF to 10 F at frequency from 50 Hz to 120 Hz).

1.はじめに
近年電子機器の発展に伴い,電機,情報・通信,自動車電装などの様々な分野でコンデンサの大容量化,小型化及び低損失化が要求されており,これに併せて大容量コンデンサの校正サービスに対する関心も高まっている.
当所における大容量コンデンサの測定は,電流比較ブリッジ(1)を用いて行われており,1Fの大容量コンデンサが測定範囲の限界である.また原理上,標準器に使用するコンデンサは2端子接続となるため,周波数が高くなると直列に加わるインピーダンスの影響を受け,これを補うための追加手順が必要になる.
今回,2段変流器の原理を応用し,標準コンデンサ及び被測定コンデンサを4端子接続できる構造とすることで,10Fの大容量コンデンサまで簡便に測定できる新しいシステムを開発した.
また,このシステムの妥当性を確認するために,コンデンサと誘導分圧器を組み合わせた仮想大容量標準を構築し,本システムで測定した結果,良好な一致が得られたので報告する.

2.システムの概要
2.1 基本原理
本システムの基本原理を第1図に示す.
Cs,Cxは各々標準コンデンサ,被測定コンデンサであり,IVDは誘導分圧器,CTは変流器及びDは検出器である.本システムの基本原理は,電源から供給される電流IがCを経由し,変流器CTの一次側に入力され,二次側の電流I2がCsに流れる.Cxによる電圧降下vXが,IVDを介してCsによる電圧降下vSと比較される.CTとIVDの誤差が無視できるならば,検出器の振れが零に収束するようにIVDを調整することで,Csの校正値,CTの巻数比及びIVDの分圧比によりCxが決定できるものである.本システムはCs,CT及びIVDから構成されており,各々の特性により全体の性能が決定される.実際の回路は,ベクトル量として平衡をとる必要があり,また10Fまで測定レンジを拡張するため,第1図に比べて複雑な回路構成となる.

第1図 基本原理 Fig.1 Basic principle

2.2 仕様及び回路構成
前述したように,本システムではCs,CT及びIVDが全体の性能を決定する重要な要素となるため,ここで各々について述べる.まず,Csには諸特性の優れた100μFのセラミックコンデンサ(2)を用いた.次にCTであるが,CTの二次側には100μFのCsが接続されるため,商用周波数領域において数十Qの負荷となり,通常の変流器ではこの負荷による誤差が無視できなくなる.そこで,CTには負荷による誤差を軽減できる2段変流器(3)を採用した.一方,IVDはCによる電圧降下vXを正確に分圧するため,入力インピーダンスが高くなければならない.そこで,IVDにはJEMICにおいて開発した広域周波数帯高入力インピーダンス形誘導分圧器(4),(5)を使用した.この誘導分圧器は,巻線を多く巻いても共振周波数を高くできる特徴を備えており,広い周波数帯で高い入力インピーダンスを実現している.
本システムの,主な仕様を第1表に示す.また,第2図にレンジ拡張回路及び損失係数の平衡回路を含めた本システムの回路構成を示す.なお,標準コンデンサ及び被測定コンデンサは直列等価回路として取り扱う.
本システムは,IlがCxとRxを経由し,CTlの一次側に入力され,IlによるCx及びRxの電圧降下vXはVT3を介して,検出回路に入力される.これに対して,CTlの一次側に入力されたIlは2段変流器であるCTlによって二次電流I2と誤差補償に相当する電流IIに変換され,IによるC及びRの電圧降下と,IIによるCI及びRIの電圧降下を合成した電圧vsが検出回路に入力される.ここで,Cxが10mF超過の場合,vsはVT2を介して検出回路に入力される.
検出回路に入力されたvX及びvsは,VT3を調整することによって平衡をとり,そのときのVT3の設定値,Csの校正値,CTl及びVT2の比よりCxを求める.また,vX及びvsの抵抗成分については,標準抵抗器RDにより直角相成分の基準となる電圧を作り,その電圧をVT4に入力し,Rxに相当する電圧に分圧してRxを求める.

2.3 回路平衡式
第1表 システムの仕様 Table 1 Specification of the system
第2図 システムの回路構成 Fig. 2 Circuit of the system

第2図において
Nl:変流器CTlの巻数比
N2:誘導分圧器VT2の分圧比
N3:誘導分圧器VT3の分圧比
N4:誘導分圧器VT4の分圧比
とすると,本システムの回路平衡式は(1)式で示され,

式(1)

ここで
I2+I2≒N1I1Cs≒CsRs≒0
とすれば,被測定コンデンサの静電容量Cxは,虚数項より
Cx≒Cs N3/(N1N2)  式(2)
となる.また,被測定コンデンサの損失係数DXは,DS=ωCsRs,DX=ωCxRxとすれば,実数項より
DX≒ωCsRDN4+DS     式(3)
となる.(2)式において1/N1N2が倍率となり,N3を直読することで被測定コンデンサの静電容量Cxが決定される.また,(3)式におけるN4が損失係数DXの直読ダイヤルであり,各測定周波数において損失係数DXが直読できるようRDを選択する.

3.システム評価の一手法
3.1 評価方法
コンデンサと誘導分圧器を組み合わせた仮想大容量標準を構築し,これをCxとして測定することで妥当性の確認を行った.
1mF〜100mFの仮想大容量標準の構築例を第3図に示す.仮想大容量標準の基準となるコンデンサCRefを誘導分圧器IVDl,IVD2,IVD3により分圧することによって任意の容量値を実現している.なお,CRefには,本システムで使用する標準コンデンサと同等の性能を有する100μFのセラミックコンデンサを用いている.また1F〜10Fについては,1mFのポリプロピレンコンデンサを基準として,上記の方法に誘導分圧器を更に1台追加して拡張した.
ここで,CRefの静電容量をCR,損失係数をDR,IVDの分圧比をN,IVDの実数部の校正値(公称値からの相対偏差)をε及び虚数部の校正値(公称値からの相対偏差)をθとすると,仮想大容量標準の静電容量CE及び損失係数DEは
式(4)
となる.また,DR≦10^-10,ε≦10^-10 及びθ≦10^-10
とすると,仮想大容量標準の静電容量の推定値CEは,虚数項より
CE≒CR/(N(1+ε))    式(5)
仮想大容量標準の損失係数の推定値DEは,実数項より
DE≒DR十θ       式(6)
となる.

3.2 結果
測定結果を第2表に示す.周波数120Hzの100μF〜100mFにおいて,仮想大容量標準の(5)式及び(6)式から算出された推定値と本システムによる測定値の差は10ppm以下であった.また周波数60Hz及び1kHzの100μF〜10mFにおいても,数十ppm以下となった.1F〜10Fにおいては,測定感度が低下するものの読み取り分解能の範囲で十分な一致が見られた.

第3図 1 mF 〜 100 mF の仮想大容量標準の構築 Fig. 3 Build-up of expanded standard (1 mF 〜 100 mF)
第2表 測定結果 Table 2 Measurement results

4.あとがき
本稿では,大容量コンデンサを測定するため2段変流器の原理を応用した測定システムの概要並びに仮想大容量標準を用いたシステム評価の一手法及び結果について報告した.
本システムは,2段変流器を用いることで負荷による影響を軽減し,標準コンデンサ及び被測定コンデンサを4端子接続できる構造とすることにより,従来は1Fが限界であった静電容量の測定範囲を10Fまで拡張し,複雑な測定手順も簡便化できた.また,システム評価の一手法として,仮想大容量標準を構築しシシステムの妥当性確認を行った結果,良好な一致が見られた.
今後,システムの評価を含め,測定システム全体の信頼性を高めていきたい.なお,この測定原理は,低インピーダンスの測定に有効であるため,他の測定システムへの応用も模索していきたい.
最後に,本システムの製作,評価にあたり多大なご協力を頂いた関係諸氏に感謝の意を表します.

参考文献
(1)石田定男:“高圧および大容量コンデンサを測定するための電流比較形変成器ブリッジ”,電気検定所技報.Vol.7,No.2,p.73,1972
(2)天野俊紀:“10μF,100μF 大容量標準コンデンサの開発と性能”2001 NCsLI Japan Forum p.43 46, 2001
(3) H. B. BROOKS and F. C. HOLTZ: “The Two-stage Current Transformer” Transac- tions A.I.E.E., p. 382 393, 1922
(4)Shintaro Tsutsumi, Akira Igarashi: “New Winding Method For Inductive Voltage Divider With High Input Impedance at Wide-Band Frequencies” 2006 CPEM Digest, p. 416 417, July 2006
(5)堤晋太郎, 五十嵐晃:“広域周波数帯において高入力インピーダンスを実現した高精度誘導 分圧器の開発”, 電気検定所技報, Vol. 41, No. 1, p. 1, 2006

(平成 19 年 11 月 1 日受付)
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電気検定所技報Vol.43,No.2 (p13)

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