白金抵抗温度計の低温領域における校正について

近年、産業界において、産業ガスの利用の広がりとともに低温領域での温度計測の重要性が高まってきています。産業ガスとはエネルギー用途以外で産業や医療で使われるガスの総称であり、用途により様々なものがあります。代表的なところでは、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、酸素ガス等があり、食品、医薬品、航空・宇宙、鉄鋼、機械、エレクトロニクス等の様々な分野で使用されています。これらの産業ガスは、大量輸送を可能にするため、日常生活で接する温度域より低い温度の液体の状態で取り扱われることが多く、適切な管理のために各ガスの沸点温度、例えば20 K(水素の沸点)、77 K(窒素の沸点)、87 K(アルゴンの沸点)、90 K(酸素の沸点)における温度測定が重要です。 

 

また、エネルギー用途のガスについても、社会生活に欠かせない液化天然ガス(LNG)の沸点温度は111 Kであり、産業ガスと同様に低温での温度測定が行われます。特に水素については、2017年に国家戦略として水素基本戦略が打ち出され、今後エネルギーとしての利用の増加が見込まれることから、20 K近傍の温度測定の重要性が増してくると考えられます。

 

このように現代社会において、低温領域での温度測定は大変重要であると考えられますが、信頼性の高い温度測定を行うためには、温度計の校正が必要です。当所においては、白金抵抗温度計を対象に77 K、87 K及び90 Kの近傍温度におけるJCSS校正を行っています。また、一般校正となりますが、カプセル型白金抵抗温度計を対象に、14 K~273.15 Kの温度範囲での校正を行っており、低温領域の温度目盛の実現に寄与しています。興味のある方はお問い合わせください。なお、校正可能な温度計については形状等の条件がありますので、まずはご相談ください。

 

(2023.11 K)

注釈:セルシウス度(℃)で表されるセルシウス温度の数値は、ケルビン(K)で表される温度の数値から273.15を引いたものです。

低温領域における比較校正

品名 校正の種類 校正範囲

拡張不確かさ

(信頼の水準約95 %)

カプセル型白金抵抗温度計 一般校正

14 K以上 84 K以下
(-259 ℃以上 -189 ℃以下)

20 mK

カプセル型測温抵抗体 一般校正

73 K以上 84 K以下
(-200 ℃以上 -189 ℃以下)

40 mK

白金抵抗温度計、
測温抵抗体
JCSS校正

‐196 ℃ 、‐186 ℃ 、‐183 ℃
(77 K、87 K、90 K)

6 mK (注)

ディジタル温度計 JCSS校正

‐196 ℃ 、‐186 ℃ 、‐183 ℃
(77 K、87 K、90 K)

10 mK (注)

白金抵抗温度計、測温抵抗体、
ディジタル温度計
JCSS校正

-80 ℃以上 80 ℃以下

7 mK

白金抵抗温度計、測温抵抗体 一般校正

-180 ℃以上 80 ℃以下

40 mK

 注:通常は40 mKとなります。

 

※ 基本的には近傍温度での校正となります。

※ 受け入れ可能な器物として条件がありますので、ご注意ください。

※ 校正の不確かさは、校正範囲で一番小さなものを記載しています。

 

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