「航空宇宙産業における各規格について」

航空宇宙産業(Aerospace Industry)は、航空機、ロケット、人工衛星などの設計、製造、試験、販売、整備などを行う産業であり、航空産業と宇宙産業の双方が含まれています。

この内、宇宙産業(Space Industry)は、ロケットの開発、製造、打ち上げを行う「宇宙輸送産業」、通信衛星、地球観測衛星、測位衛星等の開発、運用を行う「人工衛星産業」、月探査機、火星探査機、宇宙望遠鏡、宇宙探査ロボットの製造を行う「宇宙探査・科学ミッション」、月や小惑星からの鉱物資源採掘、水資源の利用のための「宇宙資源開発」、軌道計算、衛星運用システム、宇宙用AI、自律制御技術を開発する「宇宙関連ソフトウェア・AI」など、非常に多岐にわたる分野を包含しています。

一方で、航空機産業(Aviation Industry)は、航空機の設計、製造、修理をはじめ、航空輸送サービス、空港・地上支援サービスに至るまで、こちらも非常に多岐にわたる産業になります。主に旅客機、貨物機、ヘリコプターなどの各種航空機が対象となります。

日本の航空機産業は、世界的な民間航空機市場の拡大を背景に、着実に成長を続けていますが、国産旅客機開発は「三菱スペースジェット」の開発中止に象徴されるように、一時的に停滞している側面もあります。

しかしながら、航空機1機あたりの部品点数は300万点にものぼり、中小企業を含めた幅広いサプライチェーンで支えられており、実際に我が国においても中小サプライヤー含めて多くの企業が参画しています。
近年では、脱炭素社会の実現に向けてグリーン技術や、設計・製造工程へのデジタル技術の導入が進んでおり、持続可能な航空機産業の転換が期待されています。

航空宇宙産業における品質管理は非常に重要であり、特に安全性と信頼性の確保が求められます。航空宇宙産業では、ISO 9001やJIS Q 9100などの品質マネジメントシステム(QMS)の認証取得が一般的です。

 

各種規格の概要について(参考)

ISO 9001、JIS Q 9001

品質マネジメントシステム(QMS)に関する国際規格または日本産業規格になります。製品及びサービスに関する要求事項を補完する規格であり、製品やサービスの品質を継続的に改善し、顧客満足を高めることを目的としています。

 

AQMS(Aerospace Quality Management System)

航空・宇宙・防衛産業向けに特化した品質マネジメントの国際規格群です。 ISO 9001をベースに、航空宇宙製品の機能・性能及び安全性確保などに関する国際的に共通な航空宇宙業界特有の要求事項を追加した規格で、IAQG(国際航空宇宙品質グループ)が作成しています。

 

JIS Q 9100、AS 9100、EN 9100

航空、宇宙及び防衛分野の組織に対する要求事項として作成された品質マネジメントシステム(QMS)で、IAQGが作成した9100規格(AQMS)を基に作成されています。これらの規格は日本のJIS Q 9100、米国のAS 9100、欧州のEN 9100など、世界35か国以上の言語に翻訳され、航空宇宙・防衛産業におけるグローバルな部品調達基準として広く採用されています。

 

SJAC 9110、AS9110、EN9110

航空分野における整備・修理・点検を行う組織向けの品質マネジメントシステム(QMS)規格です。日本ではJAQG(航空宇宙品質センター)によりSJAC 9110として管理・運用されています。

 

SJAC 9120、AS9120、EN9120

航空、宇宙及び防衛分野における部品や材料の販売・流通を行う商社・代理店向けの品質マネジメントシステム(QMS)規格です。

 

Nadcap(National Aerospace and Defense Contractors Accreditation Program)

航空宇宙および防衛産業における特殊工程(Special Processes)の品質を確保するための国際的な認証制度です。

 

AMS2750(Aerospace Material Specification 2750)

航空機部品のための熱処理設備管理規格であり、高温計測に関する規格です。

 

AMS2769(Aerospace Material Specification 2769)

航空機部品のための真空熱処理規格であり、真空中の熱処理に関する規格です。

 

これら規格への認証を受けるには、ISO/IEC 17025(試験及び校正機関の能力に関する一般要求事項)による校正を受けた計測器を使用することが推奨または要求される場合があります。JEMICではISO/IEC 17025によるJCSS校正JAB校正を行っております。各種計測器の校正及び管理についてご検討の際は、是非お問い合わせください。

 

 

(2025.06 K)

 

 

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