計測器の校正を受けた後、校正証明書に有効期限の記載がないため、
など、疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
実は、計測器の校正証明書には法的な有効期限は定められていません。つまり「○年間有効」といった決まりはなく、次の校正のタイミング(校正周期)は、使用者(計測器の管理者)が自ら決定する必要があります。
混同されやすい「検定」と「校正」の違いを簡単に説明します。
| 種類 | 対象例 | 有効期限 | 説明 |
| 検定(Verification) |
質量計(はかり)、照度計、騒音計など注1 の特定計量器 (18品目) |
法的な有効期限あり |
計量法及び関連法令で定められた基準に 適合しているかを確認する検査。取引や 証明に使用される機器が対象。 |
| 校正(Calibration) |
マルチメータ、絶縁抵抗計、オシロスコープ、 耐電圧試験器、温度計など |
有効期限なし (使用者が決定) |
測定器の性能・精度を確認し、標準器との ズレを明らかにする試験。製造や検査業務 などで使用される機器が対象。 |
注1: 取引や証明に使用されない質量計、照度計、騒音計などは検定の対象外であり、精度管理が必要な場合は「校正」が必要になります。
校正とは、あくまで「校正を行った時点での性能を証明するもの」です。健康診断に例えると、校正証明書は「受診した日の状態」を示すものであり、その後の変化を保証するものではありません。
計測器の測定能力精度は、次のような要因によって変化します。
したがって、正確な測定を継続するためには、定期的な校正が必要不可欠です。校正を怠ると、測定誤差が大きく変わったことに気付かず、品質や安全性に影響を及ぼす恐れがあります。したがって、計測器の特性や使用条件に応じて、適切な校正周期を設定することが重要です。
校正周期に「正解」はありませんが、以下を参考に設定してください。
| 条件 | 次回校正の目安(校正周期) |
| 使用頻度が高い計測器 経年劣化の大きな計測器 |
1年ごと、又は半年ごと |
| 使用頻度が低い計測器 経年劣化の小さな計測器 |
2~3年ごと |
| ISOや各種業界の基準に準拠した計測器 | 規格に従い3か月ごと、6か月ごとなど |
|
精度低下、性能劣化、動作不安定など 計測器に不調を感じたとき |
早めに再校正を実施 |
| 製品出荷に影響する重要な計測器 | 短めの周期を推奨 |
多くの企業では、「1年ごと」の校正を基本としています。
たとえば、絶縁抵抗計で製品の安全検査を行っている場合を考えてみましょう。前回の校正では正常だったものの、次の校正で基準を大きく下回った場合、その間に出荷された製品すべてが絶縁不良(漏電リスク)を伴う不良品となる可能性があります。
このように、校正周期が長いほどリスクも大きくなります。逆に短く設定すればリスクは減りますが、コストや手間が増えるため、使用状況に応じたバランスの取れた周期の設定が重要です。
以下のような場合は、校正周期の見直しを検討してください。
なお、日常点検(ゼロ確認、バッテリー確認、表示の安定性チェックなど)を併用することで、異常を早期に発見できます。
計測器を廃棄する際に「もう使わないから校正は不要」と考える方もいらっしゃいます。しかし、最後の校正から廃棄までの間に使用した測定結果の信頼性を証明できなくなるお恐れがあります。
そのため、品質を確保するうえで有効なのが「廃棄前の最終校正」です。廃棄直前に校正を実施し、計測器が最後まで正常に使用されていたことを記録に残すことで、品質保証の観点からも安心です。
繰り返しになりますが、校正には法的な有効期限はありません。校正周期は使用者の責任で設定する必要があります。特にISO規格などの認証取得や維持を行っている場合は、校正周期や有効期限を明確に定義することが求められます。改めて、ご使用中の計測器の校正周期をご確認いただき、適切な校正周期での維持・管理にお役立てください。
| ISO/IEC 17025:2017(JIS Q 17025:2018)抜粋 |
| 6 資源に関する要求事項 6.4 設備 6.4.8 校正が必要な全ての設備又は有効期間が定められた全ての設備は,設備の使用者 が校正状態又は有効期間を容易に識別できるように,ラベル付けを行うか,コード化す るか,又はその他の方法で識別しなければならない。 |
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(2025.12 T.T)
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