家庭で使用する電気の料金は、契約している料金プランにもよりますが、多くの場合、基本料金と毎月使用した電力量に基づいて算出されます。この電力量は、瞬時電力を1か月にわたって積算することで求められますが、細かな点を省いて簡潔に言えば、「使用した電力」×「電力を使用した時間」に相当します。
ここで、時間は[秒]や[時間](量の名称と単位の名称が同じでややこしいのですが)といった単位で表され、電力は[ワット]、電力量は[ワット秒]または[ワット時]という単位で表されます。時間については、時計やストップウォッチを用いて測定するなど、定量的に求めることが比較的身近に行われています。一方、電力や電力量は時間ほど身近な量ではありませんが、太陽光発電システムや電力管理システムが一般家庭にも普及してきたことで、以前に比べれば測定結果を目にする機会が増えているかもしれません。
電力がある負荷で熱や光として消費されている場合、その消費電力は負荷に加わる電圧と流れる電流を乗じて求められます。そして電力量は、この電力に、その電力が消費されている時間を乗じることで得られます。例えば、ある抵抗器に1[ボルト]の電圧を加え、1[アンペア]の電流が流れている場合、1[秒]の間に消費される電力量は1[ワット秒]となります。実際、ほとんどの電力測定機器や電力量計は、この関係式に基づいて電力量を算出して表示しています。現実には、使用される電力は時々刻々と変化するため、非常に短い時間における電力値を測定対象の期間にわたって積算することで電力量は求められますが、ここでは電力値が時間に関わらず一定である場合を考えています。なお、電力会社から送られる検針票でよく目にする電気使用量は、[ワット秒]ではなく[ワット時]で表されている場合が多いですが、これは1[秒]ではなく、1[時間](=3600[秒])の間に消費される電力量を表したものです。
一方で、公正な電力取引を行うためには、電気料金の基準となる電力量、すなわち[ワット秒]または[ワット時]という単位について、電力を供給する側と料金を支払う側が同じ認識を持っている必要があります。そのためには、どこかでその定義が定められ、関係者全員に共通のものとして知られていなければなりません。日本においてこの役割を担っているのが、計量法という法律です。厳密には、計量法に加えて計量単位令や計量単位規則など一連の法令によって定められていますが、ここでは便宜的にそれらをまとめて「計量法」と呼ぶことにします。
計量法では、電力量の計量単位は、[ジュール]又は[ワット秒]、[ワット時]で表されており、物象の状態の量としては、力学分野でしばしば用いられる「仕事」と同じ計量単位となっています。この仕事の単位[ジュール]は「1ニュートンの力が、その力の方向に物体を1メートル動かすときの仕事」となっています。この定義は、前述した実際の計測器で用いられる「1[ボルト]の電圧を加えて1[アンペア]の電流が流れた場合、1[秒]の間に消費される電力量は1[ワット秒]である」という計算式とは、一見すると無関係に見えます。しかし、どちらの場合であっても1[ワット秒]は1[ワット秒]であり、1[ジュール]は1[ジュール]であり、その大きさは同じです。これは、力学分野と電気分野の理論が整合するように構築されたSI単位系を、計量法が採用しているためです。
JEMICでは電力及び電力量の国家計量標準を維持供給しています。本稿では、この電力量の単位の定義について述べましたが、計量法では、電力量以外にも、さまざまな分野にわたる多くの単位が定められており、それらが分野を超えて矛盾しないよう調和が図られています。あらためて、さまざまな量の定義を振り返ってみるのも、興味深いかもしれません。
(2026.03 T)
計測器の校正業務
校正サービス
デジタル校正証明書等の発行について
デジタル校正証明書等のダウンロードについて
お見積り・お申込みの手続きと、納期・費用について

